「亞嶬ー」

「...また貴方ですか」

私は、女神。
如来である。


が、


最近このよく分からない妖怪に付きまとわれている。

前に、野暮用でこの永久堂に立ち寄ったときに目を付けられた。


仕事の邪魔なので、正直来てほしくはない。
と言いたいところだが、神たる者、差別無く生き物を扱わなければいけない。

だから私は、彼を傷付けないよう、言葉を選んで口を開いた。彼が一番納得する、帰宅文句を。

「どかどかと勝手に入って来て、一体何なんですか」


つもりだった。
かなりきつい言葉を吐いてしまった。

だが彼はそんなことお構いなしに、

「亞嶬のこと、好き」

と言ってきた。

人間ならば、こういう場面に遭遇した際には、頬を染めると聞いたことがある。


けれどそれは人間の話。

私は如来だ。
相手がこんな邪念の塊だったら、誰だって頬を染める前に殴ってしまうだろう。

神たる者、そのような真似は出来ないので、

「は?」

と返答しておいた。
それこそ、顔色を変えずに。



「好きって言ってんの」

リピートしなくていい。

「いやいや。貴方狼でしょう」

適当なことを言えば、