幸せの種


ちしま学園では、夏休みや冬休みの帰省が、基本的には自由に認められている。

ただし、わたしのように、自宅に帰ることで本人や家族の気もちが不安定になる場合や、警察から面会禁止と言われている場合は、帰省できずずっと学園に残っていることになる。

それでも夏休みに楽しい思い出を作ってもらいたい、という先生方の努力で、宿泊行事があったり、プロ野球の試合に連れて行ってもらったりする。


中学生の場合、それが登山だったけれど、今年の夏は悪天候で中止になってしまった。

登山も帰省もできないのは、私と琉君だけ。

それで、穂香先生が提案してくれたのだ。


「琉君とちーちゃん、我が家に『帰省』してみない?」と。


学園では以前にも、帰省できない子を先生が自宅で数日間預かるということがあった。

ただし、それには条件がある。


わたし達、子ども側の条件は三つ。

他人に迷惑をかけない。

先生のいうことを絶対に守る。

命を大事にする。


預かってくれる先生側にも条件があり、それが今回やっとクリアできたと穂香先生が教えてくれた。

先生側の条件は二つ。

お父さん、お母さん、子どもが揃った『家庭』で預かること。

家族の了承を得ること。


こうしてわたし達は、三日間、穂香先生の『家族』に迎え入れられることになった。