「ちーちゃん、おはよう。どうしたの?」

「……ぐすっ。サンタさんから、おへんじきたの」

「今、夏だよ。どうして?」


サンタさんへの手紙など全く知らないふりをしつつ、千花の眼にどんどん溜まる涙の雫を見て、穂香も自分の視界がぼやけてきたのを感じる。

気づかれてはいけないと、穂香はこっそり上を向く。


「サンタさんなら、ひっく、すぐママにあわせてくれるとおもったのに」


しゃくりあげながら、千花は穂香へ説明する。


「サンタさんはかみさまじゃないから、おねがいはきけないって」

「そっか……他には、何て?」

「しあわせのたねをくれた」

「それは、どんな種?」

「むずかしくて、よくわかんない。おしえて」


千花は、穂香に手紙を差し出した。

初めて読むふりをしつつ、穂香なりの解釈を千花に伝えたところ、何となく理解できたようだ。


「ほのかせんせい、しあわせのおてほんって、せんせいなの?」


そう問われて、穂香は一瞬考える。

室担として子どものお手本であろうと努力しているつもりだけれど、幸せになる手本とは、一体どうすればいいのか。