読み終わった穂香は、小さく感嘆の声を漏らした。
自分には、こんな風に書くことはできない、と。
サンタクロースからの手紙であるかのように見せかけて、実は一言も自分がサンタであると書いていない点、母親と一緒に暮らせる日が来ると確約していない点も、陽平の誠実さが表れている。
クリスマスどころか、毎日のように会っているじゃないの、と、穂香は最後の文章を見てちょっと笑った。
笑ったあとで、これを受け取った千花の気持ちを考え、目の奥がつんと痛くなった。
子ども達の起床時刻前、穂香が仮眠室を静かにノックする。
仮眠室のドアが開き、少しだけ寝癖のついた髪を気にする様子を見せながら陽平が出てきた。
穂香は深々とお辞儀をし、お礼を述べた。
「手紙、ありがとうございました。これから部屋に行ってちーちゃんを見守ります」
「よろしくお願いします」
そのまま藤島部屋へ立ち寄ると、例の手紙を持った千花が、ドアの前で待っているのが見えた。
穂香の顔を見た途端、ふぇぇ……と泣き出す千花を慰めようと、小走りで近寄った。



