「それでも母親を悪く思えない……いや、思いたくないのです。ただし、自分の幸せと母親の幸せはイコールじゃないことに気づいた時、それが強烈な憎しみになった事例もたくさんあります」
こんな話であっても、彼の物腰は柔らかい。
「藤島さんはこれ、どうするつもりですか?」
添削を終えた陽平は、穂香に手紙を見せながら問いかける。
少し悩んだ後、穂香はベターだと思う答えを伝えた。
「サンタさんに代わってお返事を書こうかな、と」
穂香の返事を聞いた途端、彼の眉間に皺が寄った。
「それはやめた方がいい。藤島さん、毎日学校の担任の先生と連絡帳でやり取りしていますね。『穂香先生の字』で書かれた『サンタさんからの手紙』をもらって、ちーちゃんが疑ったら?」
「う……バレると思いますか?」
千花は、生活年齢よりかなり幼い。
幼稚園や保育園へ通った経験がなく、習い事など論外で、ほとんど放置されたまま育てられていたせいである。
だから大丈夫だろうと穂香は安易に考えていたのだが、陽平の見方は違った。



