「それとプレゼント。ちーちゃんのために、特別に作った教材なの。これで勉強したら、きっと今までよりわかるはず!」


紙袋の中には、ラミネート加工されたあいうえお表、カタカナ表、たしざん・ひきざん表、時計のよみ方表などが詰め込まれていた。

それを見た陽平は、少し驚いた。

自分は千花の希望を捨てさせないため、連絡手段を託した。

一歩間違えたら生きていられないような環境に陥りそうな千花は、それがまず最優先だと考えたから。

しかし、穂香はさらに先を見通していた。

勉強ができなくて学校へ行くのが辛いと嘆く千花の気もちを考え、自分だけでも解決できる手段として教材を自作して渡そうと考えたのだ。

学校へ行けなくなったら、社会との繋がりが完全に遮断されてしまう千花のような子どもは、登校支援も重要だ。

勉強して、給食をしっかり食べて、生きる力を、気力を、希望を繋げて欲しいという願いが、そのプレゼントの中に隠されていたのだ。