幸せの種



わたしはできるだけ、ミーナちゃん一派と距離を置こうとしていた。

だけどそれにも限界がある。

食事の時間は決められているし、おやつ購入などもみんなで一斉に行動しなくてはならない。


距離を置いていても、嫌な話は耳に入ってしまう。


「琉がいなくなったから、千花はもう単なるザコ!」


大きな声で、わざとわたしに聞こえるようにミーナちゃんが話している。


「ホント、目障りだったから。琉の後ろをストーカーみたいについて歩いてさ。琉は迷惑してたし」


それは嘘だ。でも、否定したらまたやられてしまうから、わたしはただ下を向いて、ミーナちゃんの関心が他に向けられるのを待つだけ。

周りの子はそんなわたしを面白そうに眺めている。

誰もかばってくれない。かばったら、自分がやられてしまうから。

いけにえにされるのは、わたし一人で十分だ。


「シカトしてんじゃねーよ。聞こえてんだろ! いいこと教えてやるから」