……作文、何とか完成。
ほっとして伸びをしたちょうどその時、琉君が戻ってきた。
さっきの高橋先生と同じ、固い表情だった。
あまり良い話ではないんだろうなと、すぐに予測できる顔を見て、覚悟を決めた。
最悪の予想を立てていた方が、傷は深くならずに済むということを、わたしは小さい頃から学んでいた。
この場合の最悪は、わたしが家に戻されること、だろうか。
それだけは避けたい。もうあの家には戻りたくない。
私が何も言えずに頭の中でぐるぐると考えていたら、琉君が耳打ちしてきた。
「俺、さくらハウスに行くことになった」
「え? 嘘!?」
「ホント。一人欠員が出たらしい。俺に条件がぴったりだからって……受験勉強がしっかりできるからって言われたよ」
さくらハウスとは、小規模児童養護施設で、ちしま学園が一緒に経営しているところだった。
ここから離れているので、一緒に暮らせない上、学校も転校しなくてはならない。
だけど、1人部屋がもらえたり、最大でも六人までの子どもしか住めないから、落ち着いて生活できる。
「そう……だよね。ここよりずっと集中できそうだろうし、気が散るようなこともすくなくなるね」
「それ、もしかして自分のこと?」



