幸せの種



学習室で勉強していたわたし達のところに、高橋先生が現れた。

さっきまでの優しい笑顔とは違う、固い表情に嫌な予感がした。


「琉輝、ちょっと話がある」

「何ですか?」

「ちょっとここでは話せない」


わたしを見て、高橋先生ははっきりとそう言った。

わたしには、聞かせたくない話だということがわかる。


「わかりました。どこに行くんですか?」

「園長先生のところだ」


それを聞いて、嫌な予感が的中したことを確信した。

園長先生、高橋先生、そして琉君。

この三人でこれから話し合うことは、琉君に拒否権がなくて、ただその方針に従うしかない。

既に決まったことを、琉君に伝えるだけ。


わたし達は何も決められない。

大人の決定に従い、できるだけ波風立てずに過ごせる子が『いい子』と言われる。

わたしも琉君も、今までとってもいい子で過ごしてきた。

今回、決められることを聞いても、わたし達はいい子でいられるだろうか。

わたしにはその自信がなかった。