幸せの種


穂香先生の優しくて小さな声が、わたしの心に直接響く。


「ちーちゃん、残念だけれど【ちしま学園の穂香先生】は、あなた達の両思いを手放しで喜べない。それは髙橋先生も同じ」

「やっぱり、そうですよね。わたしも琉君もきっと、そう言われると思ったから隠し通すつもりで……」

「私に聞かれていることに気が付かずに失敗してしまった、と。残念ながら私も気が付きたくなかった。でも、知らんぷりもできないの」

「どうしてですか? わたし達、誰にも迷惑をかけないから。他の人に気付かれないようにするから。勉強だって頑張るから……」


せっかく、両思いになれたのに、またわたしは誰からも喜んでもらえないのだろうか。

わたしの気もちとは関係なく、全て周りに決められてしまうこの環境が嫌だ。

自分ではどうすることもできない、わたしを取り巻く環境が。

穂香先生にバレてしまったことと、自分の世界があまりにも残酷で、眼の奥がつんとした。

泣いたら穂香先生が困ると思っているのに、また涙が出てくる。

自分の涙腺すら自由にできないわたしは、一体どうすれば幸せになれるのだろう。