幸せの種


「俺達は、学園を出るまで、付き合っちゃいけない」

「……そう。だから……」

「何も言わずに卒園して、他の男に千花が取られるのを黙って見てろって言うのか? 俺達は色んなことを我慢してきたけど、千花まで諦めなきゃダメだとしたら、俺も脱走……」

「ダメ!」


脱走、という言葉を聞いて、咄嗟に遮った。


「じゃあ、どうすればいいんだよ!」


今にも食って掛かりそうな距離で問われても、答えは簡単に出てこない。

だから、ゆっくり話しながらまとめようと思った。


「穂香先生とさっき、車の中で話したの。穂香先生、わたし達の気もちに気づいてるみたい。だから、卒園するまで付き合うのはいけないっていうのも、さっき聞いたよ」


琉君は、静かにわたしの話を聞いてくれようとしている。


「わたしは、琉君がお兄ちゃんみたいに大事。いつも助けてくれて、守ってくれて、優しくしてくれる人って、わたしの人生でほとんどいなかったし。だから、わたしのせいで琉君が困るのを見るのは辛い」


以前、脱走した時のことを思い出した。わたしよりいっぱい怒られた琉君が可哀想で、後から何度も謝った。

それなのに琉君は笑ってた。


『千花が怒られるくらいなら、俺が怒られたほうがずっといい』って……。