「英。」
私の頭の中の声を遮って心地よいテノールが聞こえた。
顔を上げると結城がこちらにゆっくりと歩いてきていた。
私のそばまできて、私の頭に大きな手のひらを置いた。
「どうした?」
「どうやって、笑えばいいの?
ニセモノの笑顔を取り繕ればいいの?
本気で笑わなきゃいけない?
わかんない…どうやって笑うの?」
私はそう伝えようとすると声が震えた。
「他のモデルは知らねぇけど、俺は本気で笑う。
別にその対象は誰だっていい。
笑顔の裏側、俺が教えてあげる。」
そう言って私と顔を近付けて目を合わせる。
「監督、このカット後でいいですか?
あと、俺が手伝っていいです?」
結城はそんなことを監督に伝えた。
監督が了承すると結城は私の足元にしゃがむ。



