佐々木さんは触覚、と呼ばれる顔の横の髪を軽く引っ張って確認する。



「はい、完成。」



私は佐々木さんに頭を下げた。



「足、無理しないで頑張ってね。」



彼女はニッと笑って控え室を出ていった。



SEIRAさんは最後の出番になり、私の準備が終わる前に控え室を出ていた。



姉ちゃんが持ってきた車椅子に乗せられてバックヤードに向かう。



「紫さん!スタンバイスタンバイ!」



「あっ...」



バックヤードにたどり着く直前に姉ちゃんが呼ばれて私は車椅子のまま放置される。



「紫月さんって仕事になると周りのこと何にも目に入らなくなるもんな。」


笑い声が聞こえ車椅子が軽く揺れ動き出した。

「仕事の時の姉ちゃんは好きだけど嫌いなんだよ...」

私の小さな呟きは私自身の乾いた笑いでかき消される。