客席はザワザワとしていてまた涙が溢れそうになるのを必死に耐えていた。
情けなくて悔しくて辛くて...
申し訳なくて。
湧き上がる涙を抑えてバックヤードに戻る。
やっとの思いで辿り着いたバックヤード。
昨日今日で負荷をかけたのもあり引き摺り歩いた足は限界を迎え、それを庇う反対の足も耐えられずに膝から崩れ落ちた。
歯を食いしばって痛みを堪える。
「英!」
ふと顔を上げるとそこには焦った顔をした結城がいた。
「痛い...」
ただその言葉だけをつぶやく。
「この後、トリ歩けるか?」
「歩けないって言われても...絶対に歩く。」
私は結城の目を見て言った。
「なら、やってやればいいじゃん。」
彼はにっ、と笑って私を抱き上げる。
「え、ちょっと。」
「紫月さん、車椅子お願いしていいですか?」
すれ違った姉ちゃんに結城はそう告げた。
姉ちゃんは少し戸惑ったようだったがすぐに医務室のある方向へ走っていった。



