私は一度ブーツを脱ぎ靴下を下ろし冷却スプレーをかけた。
少しの気休め程度にはなるだろう。
無様な姿で観客の元へ、ランウェイへ行く訳にはいかない。
怪我はあくまで私の事情であって、見ているみんなはそのことを知らない。
私がスプレーの蓋を閉めた時、バックヤードのメイン電気が消え、小さなライトが何ヶ所かで点く。
やがて会場全体の灯りがゆっくりと落ちていく。
客席から歓声があがるのが聞こえる。
私たちの中でも空気がピンと張りつめ、緊張しているのが肌で感じられる。
「ふっ!」
隣にいたSEIRAさんが一気に息を吐いたのが聞こえる。
それはいつも彼女が気持ちの切り換えをし直す時にする行動。
彼女はもうスタートしようとしている。
さあ、今年もChristmas Collectionが始まる。



