やがて始業の時間がやってきた。
ほとんどの席は埋まった。



けれど1つだけ空席。
私の隣の席には誰もいない。



がらっと言う音と共に先生が教室に入ってきた。



「進級おめでとう。

また今日から新年度が始まる。
気持ちを切り換えて頑張ろう。」



まあありきたりな挨拶。

私は頬杖をついて聞いていた。



「ここで君たちに紹介したい人がいる。

入ってくれ。」



先生のその一言で1人、男子が入ってきた。



私はあまり興味がなく、窓の外を見ていた。



誰がこようと関係ない。
所詮ただのクラスメートの1人に過ぎないんだから。





この時はこのぐらいにしか考えていなかった。



この出会いが私のこれからの人生を狂わせることなんて――



自分自身も知らなかった過去と

そして忘れることもできない

“あの子”

の今を知ることになるなんて――





知る由もなかったんだから。