「俺はあんなに囲まれてるのになんで英はそんな余裕そうなの。」
「だって今の私は英小夜であって、小町でないから。」
私が小町であることは全く知られていないだろう。
囲まれる理由がない。
「ムカつく。」
「ありがと。」
私の訳の分からない返答に結城は小さく舌打ちをしていた。
家に帰って見たニュースでもエンタメコーナーは私たちの話題ばかり。
街頭インタビューでもあの今朝の女子と同じように
『小町と玲於くんなら嫌じゃない。
むしろ応援する。』
っていう声が多く、その言葉を聞くと思わず頬が緩んでいた。
私が制服を片付けてリビングに戻ると仕事終わりの姉ちゃんがソファに寝転がっていた。
「祐子さんから聞いたわよ。
あの社長がやりそうなことだわ。」
そう言って姉ちゃんは笑っていた。



