隣の部屋に隠れてまもなく、一人の女性が現れた。
かろうじて聞こえる会話。
「朔さん、お久しぶり。会いたかったわ…」
どこからどう見ても金持ちの女って感じ。
すると隣で、七海さんが教えてくれた。
「あの女ね、水島加菜って言って、水島コーポレーションの社長令嬢なのよ。」
「水島コーポレーションって、あの…」
大手食品メーカーだ。
その社長令嬢が朔を訪ねて来るってことは、つまり…
「婚約者…とまでは行かないけれど、互いの両親はそれを望んでいるわ。特に向こうの親はね。」
「そ…なんですか。」
「それに、あの女は本気で朔に惚れててね。ああやってしょっちゅう会社に現れるのよ。朔は今まで他の女に興味なかったから適当にあしらってたけど、奏ちゃんが現れてから、朔は変わったから。」
朔が…変わった?
その意味がわからず、七海さんを見つめる。
「朔は、よく笑うようになった。奏ちゃんと暮らすようになってから。朔も私も、とてもじゃないけど笑ってなんかいられなかったから…」
「え…?」
今の言葉の意味を問いかけようとした、その時だった。
ガタンと物音がしたので、ドアの隙間から覗き込むと…
朔が社長令嬢からキス…されていた。

