みだらな天使


「不安にさせた俺が悪い。」



朔がそう呟くから、私もギュッと朔を抱きしめた。




きっと朔は全部わかってるんだ。




私が孤独感に駆られていることを。





独りにしないでと心の中で訴えていることを。





「…七海さんって、どんな人?」



朔の胸に顔をうずめながら聞いてみる。





「七海?あいつは人使い荒いぞ。優秀だけど冷酷人間だな。だって、こうやって休日でも平気で仕事させようとするんだぞ?いや〜俺エレベーター乗っててよかったー。」




いや…あれは、仕事をさせようと伝えに来た秘書の顔じゃない。




好きな人に会いに来た“オンナ”の顔だった。




そんな七海さんの気持ちになんて、この男は露知らずなんだろうけど。







…なんて、この時の私はまだ他人事のようにそんなことを思っていた。




この後すぐ、私の前にライバルが現れるなんて…




そして、ライバルとして意識するほど、自分が朔のことを強く想っていたなんて…




この時の私は、知る由もなかった。