列車の中は騒がしかった。
少し離れた座席に団体で客が乗っている。
派手な服装でしばらく黙って見ていたが男女の笑い声が絶えなかった。
然程大きくは無いもののポップな音楽をかけそれに合わせてリズム遊びのようなゲームをしている。
その音は動揺してていた舞音の心を少しだけ明るくした。

「あの、。」

ふっと生まれた心の余裕からか気が付けばその団体に声をかけていた。
一番近くにいた少し年上っぽい女性が振り返る。

「何をなされているんですか?」

一瞬怪訝な表情を見せた女性は舞音を見るとまた元の陽気な表情に戻った。

「曲に合わせて歌っているのよ。盛り上がって来たらこうやって動きをつけて、だんだんみんなで真似していくと…。」

ほら、と軽快に動く女性に合わせて周りの人たちも動き出した。
それは段々見ていると踊りのように見えてくる。

「私達はね、こうやってお客さんとか見ている人を巻き込みながらパフォーマンスをするっていうスタンスでいろんな街を旅しているの。」

あなたも一緒にどう?と誘われて団体の中に腰を下ろした。
実際にやってみると夢中になってあっという間に何駅か過ぎていった。

「あなた、センスあるわね!」

妙にテンションの高い女性に実は自分もパフォーマーである事を明かす。
少し詳しく話せば周りの人たちも静かに聞いてくれた。

「そういうパフォーマンスも良いですね!」

「私達にはないものね。」

屈託のない笑顔でそう言われてハッとする。
今まで自分がやって来たものが正しくてその幅を広げるために旅に出たつもりだったけど、本当に広げないといけないのは視野だったのかもしれない。
パフォーマンスにはいろんな形があって、それを受け入れる事が銀河鉄道に近づくためのヒントだったのだと気付く。
街道の道具を使ったパフォーマンスも、セイカ達の強いインパクトのある独特な世界観も、遊びのようなリズムパフォーマンスもそれぞれに見たいと言うオーディエンスがいてそれで良いのだ。