本能的に舞音はこれをパフォーマンスと認めちゃいけないと思った。
お客を楽しませるのが本物だと信じて来た以上認めるわけにはいかなかった。
もう正解がわからない。
ただ、コレにお金を払って見にくるお客がいることだけが現実だ。

アズマはさっきの様子とは一変してより一層不気味に、ミナミは溢れんばかりの気持ちを乗せて艶やかに踊る。
初めは見つけられなかったセイカは男に負けず劣らずの力強さがあった。
引き込まれる世界観に手の汗が止まらない。

「違う…、これは…。」

認めちゃいけない。
舞音は小屋を飛び出した。
これ以上見ていたらおかしくなってしまう。

夢中で走って気が付けば駅の前にいた。
そこでセイカに黙って出て来てしまったことに気付く。
幸い、セイカの家の酒場は駅からそう遠くないので一度そちらに足を向けることにした。

酒場の前に来れば中が賑わっているのが分かった。
恐る恐る扉を開ければ元気にカウベルの音が鳴る。
ビクリとすればカウンターの中の人物と目があった。
セイカのお母さんだろう。
おや、と目を丸くする彼女にペコリと頭を下げた。

「あの、セイカさんにありがとう。急に帰ってごめんなさい。と伝えてもらえませんか?」

一瞬戸惑った様子だったが構わないよ、という言葉を聞いて舞音は焦るように店を出た。
そして再び琴虵の駅に戻る。
この街から出られる、そう思うと駅に着いた瞬間力が抜けたように歩調が弱まった。
その脇を相変わらずこの街の人は足早に抜いて行く。
やがてやって来た列車に乗り込むとホッと肩の力を抜いた。