「セイカ。ソイツ誰?まだ客入れてねぇんだけど。」
男の言葉でここに居る全員が何かしらの関係者だと察する。
男の横にはもう一人長い髪のポニーテールの女もいる。
「北の街から特別ゲスト。この街の踊りを見たいんだって。」
男の視線が舞音に向けられ初めてちゃんと目があった。
慌てて舞音は名を名乗る。
しかし、そもそも特別ゲストと紹介されるほど舞音は何者でもない。
少しだけ居心地の悪さを感じるがあえて否定するにはタイミングを逃した。
北の街と聞いて反応したのはポニーテールの女の方だった。
「北の街って、もしかして銀河鉄道がある所?」
頷くと女は興味有りげに微笑んだ。
「私、ミナミ。こっちの背の高いのがアズマ。」
「おい、勝手に…」
言いかけるアズマをいいじゃない、とミナミが遮る。
表情があまり動かないアズマは何を考えているか分かりづらい。
「ミナミさんも銀河鉄道を?」
「勿論よ。パフォーマーなら当然でしょう?」
ミナミの目はギラギラと輝く。
それは舞音の憧れる気持ちとは少し違うと直感的に感じた。
この街に来てからずっと感じる違和感。
その正体が何かは舞音にはまだ分からない。
「ミナミ、準備するぞ。」
まだ喋ろうとするミナミをアズマが止める。
口を尖らせながらもミナミは去っていった。
それに続こうとするセイカに声をかける。
「自由に見てて構わないから。」
そう言って集団に紛れてしまえば男っぽい容姿のセイカはすぐに見失ってしまった。
やがて観客が入ってくる。
そして始まりのベルが鳴り響いた。
始まった瞬間の世界観に思わず鳥肌が立つ。
「え?」
初めて踊りを見て怖いと思った。
こんなパフォーマンスを舞音は知らない。
動揺が心を埋め尽くす。
この街に来てからの違和感の原因は恐らくこれだ。
北の街とは違うこの街をそのまま体現している。