最後に出て来た男が足を止める。
先に進む男の仲間が振り返るが先に行くように指示を出すと男は舞音の元へと足を進めた。

「なんですか?」

舞音はこの男が気に入らない。
気に入らないと言えば少し語弊があるがこの男のパフォーマンスが好きではない。

「この間の話、やっぱり考えてもらえませんかねー?」

飄々とした口調で喋るこの男の名は街道(かいどう)。
道具を使ったショーをしている。
しかし、パフォーマーとして自らの身体の技術を磨く舞音にとって道具に頼るのは受け入れがたいものがあった。
そんな街道の言うこの間の話とは、道具を使う街道と身体のみを使う舞音でコラボしようと言う申し出だった。

「今のところそう言うのは考えてないので。」

「そうですか。残念です。」

あっさりと引き下がる街道に舞音の心は少しだけ引っかかった。
行き詰まっているのは事実だ。
それでも舞音のプライドが許さなかった。


時間まで練習をした舞音は仲間達にずっと考えていた事を打ち明けた。

「私、旅に出ようと思う。」

驚いた顔をする仲間たち。
固まったまま声を出せないものもいる。

「私、本気で銀河鉄道でショーやりたいんだ。一発上げてやりたい。でも、今のままじゃ一生かかってもダメな気がするの。だから、私に足りないもの探しに行きたい。」

一度言い出したら聞かない舞音。
その性格を知ってか知らずか誰一人引き止めるものはいなかった。

「行ってこい。その代わり、帰ってきたら俺たち皆んなでぶちかますぞ!」

「私たちも技術磨いて待ってるから。」

ありがとう、と舞音は言葉を噛み締める。
出発は数日後にする事を告げると激励の言葉を貰いながらスタジオを後にした。