突然なことに首を頷かせる事しかできなかった。

「ごめんなさい、真剣な顔をしていたからつい声をかけてしまったわ。あなたにも掴みたい夢があるの?」

「はい。絶対にここでパフォーマンスをしたいんです。」

「応援してるわ。」

ふふふと笑うと女性はお店に戻っていった。

あー!お姉ちゃんだー!聞き覚えのある叫び声にボーッとしていた脳が引き戻される。
と同時に腰にくる衝撃を受け止めた。
大きな瞳をくるくるさせながら満開の笑顔で見上げてくる女の子。

「美来(みく)ちゃん、苦しいよー。」

しゃがんで美来に目線を合わせると少し遅れてやって来た親友が、妹がごめんねーと手を合わせた。
親友と妹の美来は事あるごとに舞音の踊りを見に来てくれる。
親友だけじゃない、練習で出会った仲間や家族、さっきの様に始めは通りすがりだった人、多くはないのかもしれない。
しかし、舞音にとっては多くの人が応援してくれている。
それが舞音が諦めない理由だった。
どん底になるくらい凹んだ時でも見捨てず待っていてくれた人がいたから、舞音の夢は舞音だけのものじゃなくなっていた。

「またショーやる時は声かけてね。」

勿論と答えて舞音は親友と美来に手を振った。


日も傾きかけた頃、小さなスタジオに数人の人が集まってきた。
舞音も慣れた様に入って行く。
中にいるのは舞音の仲間たちだ。
ロビーで談笑する輪の中に声をかける。
スタジオを借りれる時間までまだ少しあるので次のショーの打ち合わせをした。
各々やりたい事はあるのにそれがうまく繋がらない。

「お疲れ様でーす。」

前のスタジオの利用者がガヤガヤと音を立てながら出てきた。
手には大きな道具をたくさん持っている。

「あれ、次舞音さん達ですか。」