「あの!私、駅ここなんで!ありがとうございました!」

丁度帰ってきた北の街の駅に滑り込んだ列車から舞音は勢い良く飛び出した。
その足で街道の元へと向かう。


「街道さん!」

扉をバンっと開け放ち肩で息をする舞音を見て目を丸くする街道。
そこは街道がいつも仲間と練習を終えた後に食事をしている食堂だった。
周りのお客さんが何事かとこちらを伺っている。
しかし、そんな事を気にしている暇はない。

「そんなに急いでどうしたんです?」

差し出されたグラスの水を奪うように飲み干すと舞音はもう一度街道と向き合った。

「以前お話ししてくれたコラボレーションの件、やりましょう!」

いつも飄々としていた街道が初めて驚いた顔を見せた。

「どういう心境の変化が?」

「良いものを作りたいだけです!」

舞音の言葉にニヤリとして頷くと立ち上がった。
そして無言で手を差し出してくる。
その手を掴むと固く握り合った。
この男もまた銀河鉄道を本気で目指すパフォーマーの一人なのである。


帰ってきた舞音を仲間たちは温かく迎えてくれた。
あれやこれやと聞いてくる仲間に舞音はこれからの事を話す。
あれほど敬遠していた街道と協力する事に初めは皆も戸惑っていたが、この旅で感じた事考えた事を話せば一様に頷いた。


それからは大変だった。
これまでお互いに道具を使わないパフォーマンスと道具を使うパフォーマンスしかして来ていない。
どう組み合わせて良いか分からずいくつか続く演目を交互に行うという事にもなりかねなかった。