「あの、」
「ん?」
彼女は俯いてた顔をあげて僕に目を合わせた。
少し困ったような彼女の顔に、少しドキッとする。
そしてようやく目がまた合ったと、彼女をしっかりみようとするけど。
僕はそのまっすぐな目を汚してしまいそうでゆっくりそらした。
「……私は、羨ましいです。その……、執着できる大切なものがあること」
彼女はなにを知ってるのか。
僕がこのクマのストラップごときにどんな感情を抱いてるかも知らないくせに、これを僕が大切で執着しているものと言う。
僕は握りしめたクマのストラップをみた。
あの人から……あの、僕のコンプレックスであるあの人からもらったものに、
執着という言葉が一番似合うと知ったのはいつだったか。
いらない、といいつつ手離せなかったクマのストラップ。
僕は『陽炎』の副総長で、こんなもの何一つ似合いたくないのに。
もう一度、彼女と目を合わせようとした。
「私には……そんなもの、ないので」
けれど、彼女はまた目を伏せた。
僕と目があって、外して。また合って。
そう思ったらまた、彼女は下を向いてしまった。
これが計算なんだとしたらこの子は世界中を虜にできると思う。
現に今僕が、調子を狂わされている。


