朝の澄んだ空気

冷たく濡れた若葉たち


それを分けて走ったら足が濡れた
着せられていた浴衣の裾が冷たい


朝早く門が開いた
俺はそれを追いかけた
連れてかないとは言われた


付いてくるなとは言われていない
ここにきてから初めて自分の足でここを出た



〜〜〜



体力つけて置いて良かった。
日頃の稽古がここで生かされるなんて…



まだ朝霧も晴れず朝日も上りきらない刻



桜色の男は銀色のタグを光らせながら建物へ入った
男は空のコンクリートの箱の中で止まった



「俊平。」



名を呼ばれてどきりとした
「いるんだろ。」
顔は見えなかった
姿をあらわす

「なぜ付いてきた。」

……。


「お前は昨日負けた…。」


「着いてきただけだ。
連れてきてもらったわけじゃない。」


はあと男は息を吐いた。


「それに今日は仕事はない。
お前と話したかった。」


……?


「お前はなぜ、俺に…
仕事に連れてきてほしい?」


「俺は…
お前を守るためにいる。



だから着いていく。」


男がこちらをみた


「そういえばそんなこと言ったけ。」


いつもの優しい目だ
「でも私は弱いやt…「愛兎さん、あなたは弱い…
俺があなたを守る


いや


強くする。」



彼は笑った


「そうだな。
俺は弱くなった……
こんなこと気付けないなんて………




犬…………

逃げろ……………」


男の口から赤い液体が吹き出る
それがコンクリートの冷たい床に大量に落ちた


男の体が揺らいだ
めり込んだ鉛玉。
音がしなかった……


逃げろって…
四方はどこからが現れた黒い男たちに囲まれている。


揺らいで倒れたように見えた男の体は目の前で立って腰にさしていた大太刀を構えていた


「俺の後ろにいろ。
隙を見て逃げろ……


逃げるのは得意だろ?」


男がウインクをする


「逃げない。」


「逃げるのも強さd「俺はお前を守るんだっ…」


傷口からは静かにだが確実に血が流れ続けている
彼の背中側に立つ


「これ使え…」


木刀?


「お前に人は殺させない…
お前にはこっちの世界に来て欲しくない……
だから………
お前を連れてこなかった…………」


男は力なげに笑う


俺はそれを構えた
思った以上に人がいる
背中越しに荒い息遣いが分かった
初めて聞く呼吸
初めて見える人を殺す気の男の振
初めて見る男の強さと弱さ


「俊っ……。」


体を飛ばされた
コンクリートの壁に体を打ち付ける


ーパアンパァァアン


二度の発砲音直後に揺れた愛を知らない兎の体
「愛兎さんっ…!!」


少し笑って倒れた男


黒い男たちを睨みつける
落ちた大太刀を手にとって構えた






重い…

こんなに重いの初めて持った
一度目をつむって息を整える





ー目を開いた





〜〜〜




辺りが真っ赤だった


自分の手も




着物の男も



ーかしゃん


重いものを手から離して男に駆け寄る
「私のこと見過ぎだ…」
そう笑った
口から赤が漏れる
「久しぶりにこんな傷を負った…
いや……
初めてだよ………。


さあ、帰ろうか。」
男は大太刀を拾い上げ立ち上がった。
俺は横に立つ


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