今日は火薬の匂いも鉄の錆びたような匂いもしない
煙草の匂いだけ…



「なんだ?
臭うか?」



自分でも匂いを確かめる愛兎さん




「本当の犬みたいだな。」

笑いながら少年の頭に手を置いた
少年は怒って手を払いのけた



「俊,
しゅーん。」



後ろから声が追いかけてくる
「俊。」
前に回り込んで俺の目をのぞいた


「天堂から一本とったんだって?
すごいじゃん。」


褒められると照れくさい。
けど…
嬉しい


「私ともやろうか。」


「14歳になった俊と初めての手合わせ。」


楽しそうに笑った


「これに勝ったら、仕事に連れてって。」


次は困ったような顔で笑う


いつも通り無言で始まった
人はいないけど天堂さんの気配がする
そちらを見てみた


「余所見か?」


耳元で声がして後ろへ飛んだ
いつのまにか詰められる間合い
いつも…
気配がない


でも…


今日は…





なんだかいける気がしてた


「逃げてばかりじゃ当たらないよ。」


離れてもすぐに詰められる間合い
逃げるのをやめて一歩前へ出た


なかなかいい動きだったと思う

「今のは、良かった。」

ほら、褒められた
出した足は男の腕によって止められ空を蹴った
バランスを崩し天井をみる

ーゴツッ

何か硬く重いものが床にぶつかる音
頭に衝撃が走った

「終わr…「終わってない。」

地を蹴って彼に向かった







〜〜〜







「お前は連れてかない。」







目を薄く開く
寝室の天井だ
……。
その日
枕が生温いもので濡れた