「じゃあ図書委員さん、この本借りたいんで、お願いできますか?」


一ノ瀬くんがそう言って、単行本を私の手からそっと取り上げる。


「……う、うん。いいけど」


私は内心戸惑う気持ちでいっぱいだったけれど、そのまま彼のあとをついてカウンターへと向かった。


「あの、それじゃ、学生証貸して」


「あー、学生証ね。はい」


――ピッ。


機械で彼の学生証と、本のバーコードを読み取り、貸し出しの処理をする。


そしてそれらを彼に手渡したら、彼はニコッと嬉しそうに笑いながら受け取った。


「ありがとな、図書委員さん。残りの仕事も頑張れ!」


言いながら、もう片方の手でポンポンと頭を撫でてくる一ノ瀬くん。


「……っ」


慣れないスキンシップに、不覚にも心臓がドキンと跳ねる。


そのまま彼は機嫌よさそうに本を抱えると図書室を去っていったので、私はカウンターの前でたたずんだまま、ポカンとしていた。