分厚い単行本をそっと棚から取り出し、一ノ瀬くんに見せる。


そしたら彼は興味深そうにそのカバーをまじまじと覗き込んできた。


「へぇ、なになに、『雪の妖精』っていうんだ。なんか、雪菜の名前にぴったりじゃん。どんな話?」


「えっと、ファンタジーなんだけど……。とある国の王子様が、旅の途中に仲間とはぐれて雪山で遭難したところを、リリスっていう雪の妖精に助けられて、王子は一生懸命介抱してくれた彼女に恋に落ちるの」


とりあえず簡単にあらすじを説明しようと語り始める私。


するとそれを、「うんうん、それでそれで?」と興味深そうに聞いてくれる一ノ瀬くん。


「妖精である彼女の一族は人間を野蛮だと思って嫌っているんだけど、彼女もまた優しい王子に惹かれていって、二人はどんどん仲を深めていくんだけど……」