からかい半分で来たのかなと思い、思わずそんなふうに尋ねたら、苦笑いする彼。


「うわ、失礼だなー!俺だって本くらい読むよ。まぁ、ほとんど漫画だけど、たまに小説も」


「……そうなんだ」


「ってなわけで、図書委員さんのおすすめありますか?」


唐突にそんなことを聞かれ、戸惑う。


「おすすめって言われても……。一ノ瀬くんの好みがわからないからなんとも」


「俺の好みに合わせなくても、雪菜のおすすめでいいよ。あっ!じゃあ、雪菜の一番好きな本教えてよ」


「えっ」


私が一番好きな本……?


それを知ってどうするんだろうなんて思いつつも、一番好きな本といえば、私の中では決まっている。


一瞬ためらいながらも、その本が並ぶ棚へと歩いていく私。


好きな本はたくさんあるけれど、一番は、やっぱり……。


「この本、なんだけど……」