よし、めげずにもう一回。


そう思って腕を伸ばし、本を手に持ったまま一生懸命背伸びをする私。


プルプルと右腕が震えてくる。


すると、急にその時背後から、ふっと人の気配を感じて。


あれ?と思った瞬間、後ろから誰かが私の手に手を添えて、その本を棚にスッとしまってくれた。


えっ……?


同時に頭上から聞こえてきた、耳に覚えのある声。


「大丈夫?高いとこは俺がやろっか?」


ドキッとして後ろを振り返ると、そこにはなんと、微笑みながら私を見下ろす一ノ瀬くんの姿があった。


ウソッ!なんでここに……。


いつの間に来たんだろう。


しかもなんか、すごく距離が近いんだけど。


気が付いたら彼に囲い込まれるような体勢になっていて、ますます動揺してしまう。


「い、一ノ瀬くん、なんでっ……?」


驚いた声を上げる私に、一ノ瀬くんはニコニコしながら言う。


「だって俺、本借りに行くって言ったじゃん」


まぁ、確かにそう言ってたけど……ほんとに来たんだ。


てっきり忘れてると思ってた。


「ほ、ほんとに借りに来たの?一ノ瀬くん、読書とかするの?」