【完】キミさえいれば、なにもいらない。

するとそこで、ふと思いついたように尋ねてくる一ノ瀬くん。


急にまた何を言い出すんだろう。


昨日だって、別に一緒に帰るつもりで帰ったわけじゃないんだけど。


「か、帰れないよっ。私、今日委員会あるし」


「委員会?へぇ。雪菜って何委員なの?」


「……図書委員」


私がボソッと答えると、彼は私が手に持った文庫本に目をやったあと、納得したようにウンウンとうなずいてみせた。


「そっかー。確かに雪菜っていつも本読んでるもんな。本が好きなんだ?」


「う、うん……」


なんとなく、小さな声になる。


昔から、読書が好きって言うと、だいたい〝真面目ちゃん〟みたいなイメージを持たれがちだから。


実際にそうなんだけど……。