【完】キミさえいれば、なにもいらない。

「あの私、べつに一ノ瀬くんと文通とかするつもりないし、返事とか書けないからね」


期待されても困るから、一応これだけは断っておこうと思い、彼にハッキリ言うと、彼は頬杖をついたまま私をじっと見つめ、にこやかにうなずく。


「うん、べつにいいよ。俺が一方的に雪菜への気持ちを書いて送るから」


「……っ」


気持ちって。


「雪菜がちゃんと読んでくれるだけで嬉しいし」


そう言ってほほ笑む彼は、なぜだか本当に嬉しそうな顔をしていて、私は半ば呆れつつも、それ以上何も言い返せなかった。


どうしてだろう。こうやって屈託なく笑う彼を見ていると、なんだかそこまで憎めないように思えてしまうというか。


もしかして、この勢いで毎日手紙書いてくるのかな?


それはさすがに困るんだけど……。


「あ、それよりさ、今日も一緒に帰れる?」