【完】キミさえいれば、なにもいらない。

感心したように言うけれど、その顔はちょっと苦笑いしているように見える。


希望が多いとでも思ったのかな。


「でも俺、こう見えて真面目だよ?」


一ノ瀬くんがそう言って、私の顔を再びじっと見下ろす。


だけど、私はその言葉にまるで説得力を感じなかった。


「そうなの?」


「うん。超真面目」


だって、全然真面目そうに見えないんだもん。どこからどう見てもチャラ男だよ。


疑うような目をする私に、一ノ瀬くんがすかさず突っ込んでくる。


「あ、見えないって顔してんな」


そのとおり。だって、ほんとに見えないよ。お兄ちゃんと同じタイプにしか。


私が渋い顔で一ノ瀬くんを見上げると、困った顔ように眉を下げながら、ふぅっとため息をつく彼。


「仕方ねぇなー。よし、わかったよ。やっぱり、連絡先聞くのはあきらめる」


「えっ」