【完】キミさえいれば、なにもいらない。

なんだかもう、どう返していいのかわからなくなってきて下を向くと、一ノ瀬くんが横から顔を覗き込んでくる。


「俺のこと、嫌い?」


どうしてそんなこと聞くの。


「べ、べつにっ……好きでも嫌いでもない」


正直に答えたら、彼はなぜかホッとしたように笑った。


「そっか。ならよかった」


……へ?


「嫌われてないならいいや」


しかも、別に彼のことを肯定したわけでもないのに、嬉しそう。なにそのポジティブ思考。


「で、でも私、しつこい人は好きじゃないから!」


思わず付け足すようにそう言ったら、すかさず問いかけてくる一ノ瀬くん。


「じゃあ、どんな人が好き?」


「えっ、どんな人って。そんなの聞いてどうするの?」


「いいから教えてよ」


「うーん……」


少し考えてから答える。


「真面目で、誠実で、裏表のない人」


「……へぇー、なるほど。なかなか具体的だなー、それ」