彼はそう言うと、先ほど私にくれた新しいハンカチの入った袋を指差してみせる。


「そこに俺の連絡先書いて入れといたから。メッセージ送って」


「なっ……。いや、私そんなの教えてなんて言ってないからっ。別に知りたくなんか……」


──キーンコーン。


するとそこで、予鈴のチャイムが鳴って、一ノ瀬くんは席からガタンと立ち上がる。


「それじゃ、連絡待ってるから!また来るな、ばいばい雪菜!」


「ちょっ……!」


そして、一方的にそう告げると、自分の教室へと帰っていった。


ウソでしょ……。


思いもよらぬ展開にポカンとしてしまって、開いた口が塞がらない。


なんなんだろう、あの人は。いったい何を考えてるの?


今の、完全にナンパだよね?