「う、うん……。大丈夫じゃなかったけど、大丈夫」


「えっ、もしかして、マジで殴られたとか?……なんかごめん」


「いやべつに、一ノ瀬くんが謝ることないから。もとはと言えば全部、お兄ちゃんが悪いんだもん。仕方ないよ」


私がそう答えると、彼は眉を下げて笑う。


「ははっ。しっかりしてんなー」


そして、ふいに私の机の上に頬杖をつくと、急に顔をじーっと覗き込むように見つめてきた。


妙に顔が近くて、戸惑う。


それにしても、やっぱりいつ見ても綺麗な顔だな。


「ていうか、気づいたんだけど、漢字一文字違いなんだな、俺ら」


「え……うん」


「昨日のはちょっと災難だったけど、俺、一ノ瀬でよかったと思ったよ。やっぱり」


「え?」


なにそれ。どういう意味?


「だって、こうして雪菜と知り合えたし」