【完】キミさえいれば、なにもいらない。

彼方くんが再び顔を上げると、体育館が再びシンと静まり返った。


そんな中、今まで黙っていた司会者が口を開く。


「さ、さぁ……果たして答えはどうなんでしょうかー!?」


そこにいたみんなの視線が今度は一気に私のほうへと集まる。


だけど私はもう、そんなことはどうでもいいと思えるくらいに胸がいっぱいだった。


彼方くんのまっすぐな気持ちが痛いほどに伝わってきて、嬉しくて。


すぐには言葉が出てこない。


ねぇ、やっぱり彼方くんはすごいよ。


かなわないよ……。


ここまでされたら私、とても彼のことを「信じられない」なんて言えない。


言えるわけがないじゃない。


思わず目からポロポロと涙がこぼれ落ちてくると同時に、彼への想いが込み上げてくる。


今度こそ、言わなくちゃ。


私も、彼に伝えなくちゃ。自分の本当の気持ちを……。


「……わ、私も……好きっ」


場が沈黙する中、震える声を絞り出すように口にする。


どうしよう。涙が止まらないよ。


「だからっ……よ、よろしくお願いしますっ」


泣きながらそう告げて自分も頭を下げたら、その瞬間会場内に大歓声が起こった。


「おおーーっ!!」


「キャーッ!!」