【完】キミさえいれば、なにもいらない。

予想もしていなかった展開にビックリして固まる私。


心臓がバクバクと音を立て、止まらなくなる。


う、ウソでしょ……。どうしよう。


彼方くん、本気なの?


こんな大勢の前で、何考えてるんだろう。


「キャー!ちょっと、雪菜!!」


隣にいた璃子も叫びながら私の肩をバンバンと叩く。


「こ、これはすごい展開です!なんとここで、まさかの告白タイムだー!」


司会者も興奮した様子で喋り出す。


そんな中、彼方くんがマイクを通して大きな声で名前を呼んだ。


「2年3組の、市ノ瀬雪菜さん」


その瞬間、ビクッと体が跳ねる。


顔を上げると、ステージの上の彼方くんと目が合って。


「キャーッ!」


「おおーっ!!」


女子たちの叫び声や、男子たちの盛り上がる声が聞こえてくる中、司会者が「それではお相手の市ノ瀬さんにはその場で立っていただきましょうか」なんて言いだしたので、私は恥ずかしくてたまらなかったけれど、仕方なくその場に立ち上がった。


緊張のあまり、手足が震える。


どうしよう。なにこれ……。


まさか、こんな展開になるなんて思ってもみなかった。


彼方くんは立ち上がった私の顔を見つめながら、ゆっくりと語り出す。


「劇、観に来てくれてありがとう。来てくれなかったらどうしようかと思ったけど、よかった」