【完】キミさえいれば、なにもいらない。

話していくうちに、だんだんと真面目な顔になる彼。


劇の内容について語る彼の姿を、会場のみんなが静かに見守る。


「本気で誰かを好きになると、人は変わる。これは、そういうお話です。実を言うと、俺もそうでした」


だけどそこで突然、彼が思いがけないことを口にしたので、一気に周りがざわついた。


私も一瞬ドキッとしてしまう。


「え……？なになに？」


「ウソッ。俺もそうって、彼方くんが……？」


あちこちからヒソヒソと話し声が飛び交う中、彼は続ける。


「今、俺には本気で好きな人がいます。彼女にはもう何回も気持ちを伝えてるんですが、今日あらためてこの場を借りて伝えたいと思ってます」


……えっ！？


さらに彼方くんは、もっととんでもないことを言いだしたので、途端に会場全体がどよめいて、大騒ぎになってしまった。


「えーっ！ウソでしょ！？」


「マジで？なんだなんだ！？告白か？」


「え、相手誰！？」