【完】キミさえいれば、なにもいらない。

司会者がそう言ってもう一本マイクを手に取ると、それを持って彼方くんのほうへと駆け寄っていく。


「まずは主演の王子役、一ノ瀬彼方くん。演じてみた感想をお聞かせいただけますでしょうか!」


マイクを受け取った彼方くんは、観客みんなに向かって笑顔で挨拶をする。


「どうも、アルト王子の役をやらせていただきました、一ノ瀬彼方です。今日はみんな、2年1組の劇を見に来てくれてありがとう!」


その瞬間、再びワーッと歓声が起こって、会場が一気に盛り上がった。


「チャラ男の王子役、いかがだったでしょうか?クラスのみんなにこの役をやるならお前しかいないと推薦されてやることになったこの王子役、俺にピッタリだと思ってる方もたくさんいるみたいでちょっと不服なんですが……っておい、そこ笑うな!」


彼方くんが喋る横でクスクス笑いだした出演者たちのほうを指差し、笑いを取る彼方くん。


それを聞いて、ぎゃははとウケたように笑う観客たち。


それにしても、これだけたくさんの人を前にしてもまったく緊張している様子がなく、堂々としている彼は本当にすごい。感心してしまう。


「でも、自分でも結構ピッタリな役だったんじゃないかと思ってます。王子、最初は最低な奴でしたね。でも、彼も最後は真実の愛に目覚めます。つまり、本気の恋を見つけたわけです」