【完】キミさえいれば、なにもいらない。

相手にされないながらも一生懸命マヤのことを振り向かせようとするアルト王子を見て、なんだか今までの彼方くんの姿と重ねてしまい、ちょっぴり懐かしい気持ちになってしまった。


そういえば、彼方くんも最初はただのチャラ男にしか見えなかったけれど、手紙をくれたり、図書室に通ったり、わざわざ髪型を変えたり、色々してくれたんだっけ。


私が告白を断っても彼はあきらめないでいてくれたし、ずっとまっすぐに私のことを思ってくれて、気持ちを伝え続けてくれた。


そんな彼に、いつの間にか自分も恋をしていたんだ。


初めての恋でボロボロに傷ついて、もう恋なんてしないと思っていた私の固く閉ざした心の中に、彼はスッと入ってきて、優しく溶かしてくれた。


そして、いつのまにか、自分の中で彼の存在がとても大きなものになってたんだ。


思い出すと、色々あったな……。