私は勢いよく先輩の手を振り払うと、そのまま走って階段を駆け下りた。


嫌だ。もう、何も聞きたくない。何も見たくない。


悲しくて、苦しくて、目に涙があふれてくる。


ショックのあまり、息のしかたもわからなくなりそうだった。


ねぇ、どうして……。


どうしてなの?


あれが彼方くんの本性だったの?


じゃあ、今までの彼の言葉は、態度は、何だったの?


あれも全部、ウソだったっていうの?


彼だけは、違うと思ってた。今度こそ信じてみようと思ってたのに……。


ひどいよ。


私は結局騙されていただけなの?


陸斗先輩の時と同じで……。


そのまま急いで下駄箱で靴を履き替え、逃げるように学校をあとにした私。


彼方くんには『用事ができたから先に帰る』と一言だけメッセージを残し、そのままスマホの電源を切ってしまった。


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