ドクドクと激しく脈を打つ心臓。胸の奥が張り裂けそうなくらいに痛い。苦しい。


どうしよう。ねぇ、信じられないよ。


まさか、彼方くんが私の知らないところであんなことを言っていただなんて。あんなふうに思っていただなんて……。


あれが、彼の本音なの?


彼もまた、私のことをもてあそんでいただけなの?


――パシンッ。


すると、すぐ後ろから追いかけてきた陸斗先輩が、階段の手前で私の腕をつかまえる。


「雪菜っ」


振り返ると彼は、少し苦しそうな表情を浮かべながら、私をじっと見下ろしていた。


「最低だな、あいつ。俺もびっくりしたよ。でも、前からなんとなくそんな気はしてたんだ」


「えっ……」


「雪菜、悪いことは言わないから、やっぱりあいつだけはやめておいたほうがいい。あの一ノ瀬彼方って奴だけは。今の会話、聞いただろ?結局あれがあいつの本性なんだよ」


陸斗先輩の言葉が、傷をさらにえぐるかのようにグサッと突き刺さる。


「あいつは恋愛なんて遊びだとしか思ってない」


ねぇやめて。それ以上言わないで……。


「雪菜のこと本気で好きだなんて、たぶん嘘だ。あんな奴に騙されちゃダメだ」


そんなの信じたくない。ウソだって言ってよ。


「もういいっ。やめてっ!」