【完】キミさえいれば、なにもいらない。

――ガチャッ。


閉館時間になると、鍵を閉めて図書室をあとにする。


今日も何事もなく図書委員の仕事を終えた私は、そのまま鍵を返しに職員室へと向かった。


今日はこのあと彼方くんと一緒に帰る約束をしてるから、職員室に寄ったら、一組の教室まで行ってみようかな。


「失礼しました」


鍵をいつもの場所へと返して職員室から出ると、不思議と足取りが軽くなる。


そろそろ完全下校時刻だし、彼方くんも練習が終わった頃かな。


そう思いながら歩いていると、ふと後ろから誰かに声をかけられた。


「雪菜」


振り返ると、そこにはなぜか陸斗先輩が一人で立っていて。


どうしたんだろう。彼も文化祭の準備で残っていたのかな。


「陸斗先輩……」


「ずいぶん遅くまで残ってたんだな」


「あ、うん。今日は図書委員の当番だったから」


そのまま私の隣に並んで歩き出す先輩。


「そっか、お疲れ様。今から帰り?」


「うん」


「俺もだよ。ちょうどよかった。せっかくだし、一緒に帰らない?」