【完】キミさえいれば、なにもいらない。

するとそこで、彼方くんが思いついたように。


「あっ。そういえば、今日って雪菜、図書委員の当番の日だよな?」


「うん、そうだよ」


「ってことは、帰り遅い?俺、今日も練習で遅くまで残るから、終わったあと久しぶりに一緒に帰れたらと思って」


その言葉を聞いて、ドキッとする私。


そういえば、ここ最近彼方くんのクラスは劇の練習でうちのクラスよりも遅くまで残っていて、そのためほとんど一緒に帰れていなかったんだ。


今日は図書委員の当番で私も遅いから、ちょうどいいかもしれない。


「うん。閉館時間までいるから遅くなるし、一緒に帰れるよ」


「マジで、やった。それじゃ、終わったら迎えに行く。もし俺のほうが終わるの遅かったら、ちょっと待ってて」


「うん」


頷くと同時に、なんだか嬉しくなる私。


不思議だな。彼方くんと久しぶりに一緒に帰れる、そんなことで自分の心がこんなに高揚するだなんて思わなかった。


私ったら、これじゃまるで彼のことが好きみたいだよね……。


.





.