「ほら、人違いでしょ。わかった?」


「……っ、ウソだろ」


「だから、出直してください」


そう告げたら、男は急におとなしくなって、気まずそうな顔でその場を去っていった。


「勘違いして悪かったな」って一言だけ謝って。


「……はぁ」


思わずため息が漏れる。


私ったら、一体何してるんだろう。


「あの、大丈夫?」


一応一ノ瀬くんにも無事を確認し、生徒手帳を返す。


そしたら彼は、ポカンとした顔でそれを受け取り、私をまじまじと見つめながら、コクリとうなずいた。


「……あぁ、大丈夫。おかげさまで」


初めて間近で彼の顔を見たけれど、やっぱりものすごく整っている。ほんとにイケメンだ。


殴られたせいでちょっと口元が腫れちゃってるけど。


「人違いなんだから、もっとハッキリ否定すればよかったのに」