「えっ、劇?」


「うん」


ホームルームの後の休み時間、彼方くんがさっそく教室にやってきたので、1組はなんの出し物をやるのか聞いたら、意外な答えが返ってきた。


なんと彼のクラス、体育館のステージで演劇をやることになったみたいで。


各クラスの出し物は教室での催し以外にも屋外での出店やステージ発表も選べるんだけど、劇をやるクラスはなかなかいないので意外だった。


「俺のクラス、目立ちたがりが多くてさ。しかも一人作家志望の奴がいて、そいつがオリジナルの脚本書いてくれるらしいから、かなり面白い劇になりそうだよ」


「へぇ、すごいね。じゃあ、役もこれから決めるの?」


「うん。俺はたぶん役者で出ると思うから、見にきてよ」


キラキラと目を輝かせながら語る彼方くんからは、劇を楽しみにしているのが伝わってくる。


「わかった。どんな劇か気になるから、見に行くね」


思わずそう答えたら、彼はニコッと嬉しそうに笑った。


「さんきゅ。雪菜のクラスは仮装喫茶だっけ?」


「そうだよ」


「俺も雪菜が何の仮装するのか、すっげー気になる」


そう言って、頬杖をつきながらこちらをじっと見つめてくる彼。