一ノ瀬くんと男の間に立って、おそるおそる男の顔を見上げる。


正直めちゃくちゃ怖かった。関わりたくなかった。


だけど、やっぱり放っておけなかった。


「えっ?」


男は戸惑った様子で殴ろうとする手を止める。


「なんだよ急にお前。誰?」


「い……市ノ瀬遥はうちの兄です。この人は関係ないです。殴るなら、うちの兄を殴ってください」


震える声でハッキリとそう言いきったら、男は一瞬目を丸くして黙り込んだ。


「……えっ、妹?アンタが?」


「そうです」


「は?マジかよ。だってこいつ……」


そしてすかさず後ろを振り向き、一ノ瀬くんに声をかける私。


「ねぇちょっと、生徒手帳貸して!」


「え?生徒手帳?」


「そう。早く!」


「あ、あぁ」


急いで彼から生徒手帳を受け取り、写真と名前が書かれたページを開いて男に見せる。